朦朧とする頭をどうにかもたげ、状況を把握しようと周りを見回す。
酷い眩暈と吐き気。
視界はゆっくりと回っている。
ぐらぐらと揺れる意識の中、は何度かの経験から、薬を使われたのだと理解した。


「ひっでー顔でさァ」


頭上から降ってきた声。 の意識が戻るのを待っていた彼は、溜息をつきながらそう声をかけた。 薄暗いけれど判る。 此処は真選組頓所内の、彼の部屋。
少ない明かりの中、赤い瞳がギラリと光ったように見えた。


「…沖田、くん」


まだ薬が残っているのか、舌が上手く回らない。
最後に見た景色は、夕陽に染まっていたこの部屋。 今は闇に染まり、音もない。 いつも騒がしいこの屯所に声一つ聞こえない事を考えると、もう深夜を回っているのだろう。 そんなに長い時間眠らされていたのだろうか。


「これは、どういう…、」

「…いつもと趣向を変えてみただけでィ」


意識と身体を落ち着ける為に、大きく深く息を吸う。 寝かされている蒲団は勿論沖田の物で、彼の匂いがふわりとした。
そこにが居る事は珍しい事ではない。 他の隊士に見付からないように声を噛み殺し、此処で肌を重ねてきた。 攘夷志士としてあってはならない事だと判りながら、沖田に対しての警戒心はとうに捨ててしまっていた。

それが、失敗だったのか?

今まで抵抗などした事もないのに、の両手首には彼の仕事道具の手錠がしっかりと掛けられている。


「…私には、こういった…趣味は、ない、のだが…」

「別にアンタになくたって構やしねーよ」


拘束されているのは手首だけ。 何の薬を使われたのかまでは判らないが、死の危険を感じる程ならば、這って逃げる事も出来そうだ。 けれどそれをしないのは、相手が彼だから。
そして、薬のせいなのか、下肢が酷く疼いているから。


「逃げねーんですかィ?」

「何故…?」


沖田からの問いにそう返すと、彼は何かを吐き出すかのように大きな溜息をまたついた。 何処か、苛立ちを感じさせる空気を纏って。


「私は、今、逃げなければならない…状況なのか…?」


の言葉に、今度はチッと小さく舌打ちをした彼の視線は冷たい。 けれどその瞳の奥は、炎が燻っているようにも見える。
射抜くようなその強い視線は、次第に、舐めるように下へと移っていった。


「あーあー。まだ何もしてないのに、もうこんなになってら」

「……んっ、」


既に尖っていた乳首をピンと爪で弾かれ、は普段上げないような声をあげてしまった。 いつも口唇を噛み、沖田の背中に爪をたて声を噛み殺していた。 時々声が小さく洩れる事があっても、部屋の外には決して聞こえないように。 後ろめたい二人の関係を、せめて他の人には知られないように。
…なのに。
こんな些細な事で堪えられなくなっている。 たったこれだけで、吐息は甘く熱くなり、視界の端が涙で滲む。


「へー、そんな声も出せるんですねィ」


沖田の視線がもう一度の目を捕らえると、彼は厭らしく、ニタリと笑った。 靄がかかったような意識が少しづつ回復し、その分躯の奥は熱くなっていく。


「あーあー、はしたねェ。嫁入り前の女が何て格好してやがる」


身につけている物は襦袢と手錠だけ。 帯はただの飾りになり、胸元は大きく開いてしまっている。 疼きに半ば無意識で腿を擦り併せると、眩しい程に白い脚まで露わになった。


「何?そんなに犯って欲しい?」


を見下ろし、蔑むように口角をあげる沖田。 今までに向けられた事のないような、冷たい視線。
沖田に、一体何があったのか。
回復しはじめていた意識は、今度は熱で朦朧としていき、思考を鈍らせ、理性は揺らぐ。 一時の快楽に流されてしまいたい。 熱く疼くそこに、早く触れて欲しい。 自分のものではないような身体の反応が少し怖く、はきゅうと口唇を噛み締めた。


「すげーエロい顔してますぜ?…そんなにシて欲しいなら、」


髪から頬、沖田の指の腹が撫でるように伝う。 筆で撫でられているかのような小さな刺激すら身体を熱くする。 沖田の指先が顎までくると、ぐいと顔を持ち上げられた。
の眼前には、彼のもの。


「舐めろ」


いつにない沖田の強い口調。
けれどあまり気にはならなかった。
後に待つ快楽を期待し、何の抵抗もなくは口をつける。


「…っ、」


初めて間近で見る彼自身に、チロ、と舌を這わすと、上から小さく息を飲む音が聞こえた。 沖田のそれはもう膨張していて、両手が拘束されていても支障はない。 下から上へ、根元から先へ。 キャンディを舐めるようにしていると、沖田の息も少しづつあがっていく。 はぁ、はぁ、はぁ、と、の舌の動きと彼の呼吸が同調し始めた時、堪えられなくなったのか、 頭を掴まれ、喉奥まで思い切り進入してきた。


「んむっ…ぅ、う」

「焦らすなんて、100年…早えー」


喉の奥への異物に思わず嗚咽が洩れる。 捕まれた頭は容赦なく前後に動かされ、苦しくて涙が止まらない。 生理的な涙で視界が歪み、むっとする男の匂いに頭もクラクラしてくる。 それでもは、歯をたてないよう、必死に咥えこんだ。 ただひたすら解放されるのを待つ。
その時間はにとってとても長く感じたが、実際はそうではなかった。
初めて感じるの口唇と舌の感触。 顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら自分のものを必死に咥えるその表情。 そんな彼女の頭を掴んで強引に彼女の口を犯しているという征服感。 色々なものが合わさり、沖田は呆気なく達してしまう。 直前にそれを引き抜き、の顔に精をぶちまけて。

真っ直ぐ通った鼻筋、そして頬に出された精液。
とろんとした表情のに、沖田はゴクリと喉を鳴らした。


「脚、開け」


ほんの少し生臭い沖田の精が鼻腔を擽り、それが媚薬のように作用する。 限界まできていたの理性と秘部。は言われるがままに脚を開いた。
躯をよじると、ジャラリと重たい手錠の音が部屋に響く。


「うわ、何だコレ」

「ひっ、沖田…くっ」

「こりゃひでェ。ココ、洪水ですぜ?」


今まで触れてもいなかったのそこは蕩け、愛液でてらてらと部屋の明かりを反射していた。 沖田が人差し指と中指で花びらを開くと、くちゅりという音との嬌声があがる。 だらし無く濡れたそこに、ふぅっと息をかけるだけでビクリと反応する躯。 蜜は沖田の指に絡み、ぬるぬると滑って上手く開いていられない。 何度も閉じては開かれる、それすら刺激となり、は背を反らせた。 何度目かでようやく開かれたそこには、ぷっくりと赤く熟れた花芯が覗く。


「ヒクヒクいってらァ」


沖田の言葉に羞恥心を煽られ、うぅ…という呻き声と一緒に涙が零れた。の中の理性が、夜の闇の中へ溶けて流れていく。


いつも凛としている
攘夷志士の中に居る時も物怖じ一つせず、男達にも一目置かれている彼女。
男勝り、とは違う。気高く、誇り高い存在。

そんなを、目茶苦茶にしてやりたかった。

セックスの最中でもあまり表情を変えないを、欲望のままに啼き喘がせたい。
快楽だけを貪る獣のように、堕ちていくが、見たい。


「んぁ、あ…っ!」


静寂を裂くような甲高い声が屯所に響く。 ぷっくりと膨れた秘芯を、沖田が擂り潰したからだ。 この声で、幾らかの隊士は目を覚ましただろうか。 異常を感じて駆け付けるだろうか。 見るなら勝手に見ていれば良い。自分とが、烈しく交わるこの姿を。なぜなら、この、女は…。


「あ、あぁっ、嫌だ、沖田くん、やめっ…!あっ…」

「案外イイ声してんじゃねーですか」

「んっ、ダメ、だっ…、おかしくなって、しまう…っ、」

「もっと。もっと啼いてみろィ」


指の腹を使ってくるくると敏感な芽を擦る。 こんな小さなものがどうしてそんなにまで快楽を与えるのか沖田には理解出来ないが、 いつも凛々しいが高らかに声をあげて啼いている。
それだけで充分。

もっと、堕ちやがれ。

擦る指を速くしていくと、はシーツをぎゅうと掴み、口唇を噛み締めた。 の口の中に、僅かに鉄の味が広がる。 それでも沖田は休む事なく手を動かし、を見下ろす。
体液でベトベトになった指先は摩擦をほとんど起こさず、物足りなさでは腰をくねらせた。

あと、少し。

官能的な、その姿。
沖田の思い描くそれと近くなっていく。
低俗で、くだらなくて、哀れみの対象でしかない、『女』 に。
この完璧にすら感じるの、その姿。


「すげェだらしねー顔」

「待ってっ、待って!くれ…、ッあぁ!」

「…厭らしィ女」

「あぁっ、イヤだ、あっ、沖田、く、ぅん!」

「こんな…」


空いている指を花びらの奥まで挿し、その芽と同時に掻き交ぜる。 ぐちゅぐちゅと粘着質な水音は増し、蜜は泡立っていく。 開きっぱなしになったの口からは、喘ぎとも呻きともとれる、最早 『人間』 とはいえない声が漏れ、 口唇の端からは唾液が流れる。 絶頂を求めて腰を浮かし、脚をピンと伸ばす。 その姿は、沖田の思っていた 『獣』 の姿、そのものだった。
その姿は酷く煽情的で、寒気かと紛う程に背中がゾクゾクとし、 沖田自身も今までにない程に怒張し、天をついていた。
そして、同時に感じる、怒り。


「…こんな、女…」


憎しみすら感じる沖田の声は、には届かなかった。
その声は低く、小さく、の嬌声の中に消えてしまう。


「あぁっ、沖田くん、沖田く、ん…!イく、イく!イ…くぅぅ ―― ッッッ!!」


全身の緊張と、直後の緩和。
ビクリ、ビクリと躯を痙攣させては達した。
ごぽり、と、奥から蜜が更に溢れ、沖田の手首まで濡らす。 鼻につく雄と雌の匂い。
眩暈を起こしそうな感覚に教われ、沖田は何も言わず自分の性器をの中に捩込んだ。
途端、は意識が飛びそうになる。


「あぁああーッ、!!」


トロトロになっているのそこは、挿入のせいで再び達し、沖田を強く締め付け、ドクン、ドクンと波打つ。


「…、はあ、ああぁ…沖田くん、沖田くん……」


どうしても堕としたかった女の声が、譫言のように自分を呼ぶ。
沖田はそれを望んでいたはずなのに、何故か沸き上がる負の感情。

堕として、服従させて。
他の女と同じように、見下して、蔑んで。

それが自分の、女を見る正常な感情。
だというのに、どうしてこの女は、こうなってまで、自分の心を掻き乱すのか。

否、『女』 だけではない。

自分で理解できない、訳の判らない感情を抱くのは。
ムシャクシャ、モヤモヤするのは、世の中でだけだ。


「あっ、んんっ!沖田く、ン!ぁっ、もっと…!」


快楽に底はなく、は沖田を求めた。もっと深く、もっと強くと腰を浮かし、沖田に脚を絡ませる。 沖田からの快楽を求めて。…快楽、だけだろうか。

それは、自分を、求めて、いるのだろうか。

その疑問が頭を過ぎった時、プツンと、頭の中の何かが切れる音がした。
沸き上がる、殺意。
瞬間、意識せずに、言葉がぽろりと零れていた。
ピタリと止まった沖田を、強請るようにが見上げる。




「俺の女になるか、今死ぬか。アンタが決めなせェ」




自分から出たその言葉が、あまりに自然で驚きもしなかった。
選ばせてやる。
誰の手にも入らない、自分だけの女にする事が出来ないなら、死を。


自分を体内に受け入れている女をぼんやり見下ろしていると、その女は、ふわりと笑った。
クスリを使われて酷く乱れ、顔は涙と唾液にまみれて髪が張り付き、魅力のカケラも見えないこの女。 でも総悟にとって、それは、なによりも美しく見えた。


「バカな子…」


の答えを待たず、ガムシャラに腰を打ち付けて達した総悟。 その間の彼はまるで母親に縋る子供のようににしがみついていた。 そして、すぅすぅと寝息を立てている今は、まるで赤子のよう。 じんわりと目尻に涙を浮かべ、何も飾らない今の彼の表情は、なにもかもをに預けて安心しきっているように見える。


「こんな事しなくても、ずっと前から、私は貴方のものだというのに」


亜麻色の細い髪の毛を梳きながら、はもう一度、バカな子、と言った。
それはきっと、総悟に伝わっていると、伝わってくれたと、信じて。



沖田総悟only裏夢小説企画 『Rain of Kiss』 夏帆さんへ
Title By : エドナ
Image By : tomorrow