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腹部へのひんやりとした感触に反射でピクリと反応し、同時に現の世へ引き戻された。
背後からふわりと漂ってくる香り。
少しだけ血の匂いが混じった、甘い甘い彼の香り。
いつもより幾分血の匂いが強く感じるのは、きっと気のせいではない。 「…おかえり」 「ただいま、」 まだ覚醒しきらないまま声をかけると、を背から抱え込んでいる腕に微かに力が加わった。 神威本人も気付いていないだろう程に、微かに。 の蒲団に潜り込んだ彼の冷たい手のひらがゆっくりと蠢き、腹を伝いながらのぼってくる。 暖まっていた身体は、その冷たさに再びブルリと震えた。 ゆっくり、撫でるように胸の膨らみに辿り着いた彼の手。 いつもと同じで、でもどことなく違うそれに、が気付かない訳がない。 「神威、何か良い事あった?」 「…へー、わかるんだ。」 突然に図星をつかれ、神威は心底感心してみせた。 けれどからすれば当然の事。 まだ寝起きの気怠さもあり、彼への応えは飲み込んだけれど。 胸の上で遊んでいた手のひらは、の体温で温まっていき、冷たさで緊張していた身体も、いつの間にか心地良さを感じていた。 「面白いのを見付けたんだ」 ふいに降ってきた言葉は予想通りで、は 「へえ…」 とだけ呟いた。 いつだって張り付けたような笑顔の彼の、心から楽しそうな声音。 それは余程嬉しい事があったのだとわかる。 それが何なのか、およそ察しはつく。 神威が何を求め生きているのかなど、猫でも知っている事だから。 先刻まで降りていた地球で 『良い出会い』 があったに違いない。 いつもより強い血の匂いも、それで説明がつく。 「にもあの男、会わせてあげたいな」 ほらね、と、自分の考えが間違いでなかった事に、は心の中で呟いた。彼の事は手に取るようにわかるのだ。 神威の指が、次に胸の頂を目指す事も。 「神威がそこまで言う男なら、私、惚れちゃうかも知れないわね」 そう言うの言葉に、神威は一瞬の間の後、声をあげて笑った。 クスクスクスクスと笑いを引きずりながら、その口唇をの耳元に寄せ、楽しげに囁く。 「良いよ。そしたら俺が、を殺してあげる」 同時に、指先が胸の先をかすめ、吐息とともに笑みが零れてしまった。 神威のその言葉は、何より大切に想う者への言葉だから。 何より嬉しい、その言葉。 「さあ、そろそろお喋りは止めにしよっか」 「…ぁ、ふ…」 撫でまわすだけだった指先に力が入り、固くなり始めていたそれをすり潰す。 痺れるような衝撃が躯の芯を駆け抜けた、その次の瞬間。 「…きゃ、」 蒲団を剥ぎ、寝間着代わりの襦袢も一気にめくりあげられた。 そらを浮かぶこの船の空調は完璧だけれど、それでも蒲団に入っていた分、多少空気がひんやりと感じる。 「あ、濡れてる」 「…バカ」 ぐぐぐ と膝が胸につく程に脚をあげられ、秘部を見つめる視線が刺さる。 それだけで躯の奥から熱い蜜が溢れてくるのがわかった。 彼に拾われる前、花街に居た頃の事。 女のそれを見たがる男は多く、そんな男の視線に慣れきってしまっていた。 けれど彼に見られると何故か羞恥心にかられる。 少しでも閉じようと脚に力をこめたけれど、びくともしない。 くちゅり。神威の人差し指がそこへ触れた瞬間、水音と嬌声が薄暗い部屋に響いた。 そらでは障子越しに外からの明かりが入る事もない。 和紙で装飾された燈籠のみで照らされる室内は、どの壁に窓があるのかすら判らない。 神威の女というだけで宛がわれた、一人では広過ぎるこの部屋。 この船の皆も良くしてくれている。 それは神威を怖れてなのかもしれないが、汚らしい、利己的な欲だけにまみれた世界にいた過去から比べたら、 ここにいる人達のほうが余程理性的だ。 居心地はとても良いのだけれど、広い部屋に独りで居るのは淋しい。 それはただ男に抱かれる為だけに存在し、死んだように生きていたには無かった感情。 愛しいと想う事を教えてくれたのは、神威。 「のココ、早くいじってって言ってる」 露わになった花びらを、人差し指と中指を使って上下に撫でる。 指が動く度にくちゅくちゅと音がたち、腰の奥から力が抜けていく。 彼が船を降りている間、どれ程彼を求めたか。 「ちゃんとひとりエッチも我慢してたみたいだねぇ」 「神威が…そう、言うから…ぁ、」 「エライね。じゃあ、ご褒美あげないと」 「んぁっ…!」 彼の舌が露に濡れる花びらをさす。 求めていた快楽に、自然と腰が浮いてしまう。にとって、神威は自分の全て。 神威の為なら、何だって、怖くない。 「すっごい溢れてくる。でもは…ココが、好いんでしょ?」 「んっ、ぁあ…ぅっ!」 まるで生き物のように舌が動きまわってナカを犯し、中指の腹は蕾をくすぐる。 円を描くようにくるくると擦られると刺激は強くなり、ぐいぐいと上へあがっていくようだった。 仕事でない、その行為。 悦楽を教えてくれたのは、彼。高みに昇りつめていく感覚に、は奥歯を噛みしめて堪える。 達するなら、彼とがいい。 「か、神威…あたしにも、させて」 「ん?いいね、いい子だね」 かさかさと、動く度に糊のきいたシーツが擦れる音がする。 淡い炎の灯かりが影を濃くし、二人の躯を強調している。 丁寧に引き擦り出した彼自身もまた、いつもより雄々しく見えるのはそのせいか。 「すっかり俺好みになった」 「…む、ぅ」 床入りする全ての男に悦こばれるそれから、彼の為だけに。 舌を這わせれば、血管の浮き上がる箇所すら覚えている。 彼好みに、ぴちゃ、ぴちゃ、とわざと音をたて、子猫がミルクを舐めるように、丁寧に。 次第に質量を増していく神威を口に含むと、更にぐいぐいと口内を押し拡げた。 もう少し。もう少しでこれが自分に入ってくる。 男達の為にしていた 「フリ」 ではなく、彼に教えられた、本当の快楽。 躯が繋がり、心も繋がる。それを想うだけでの下肢は熱くなり、じゅくじゅくと蜜が溢れ出してくる。 「そろそろイイかな」 パタリと躯を倒されただけで、のそれはキュンと疼く。 私も与えるから、私にも与えて。早く、早く。 もうそれしか考えられなくなっていた。 すぐにでも、神威と一つに。 「、ぁあ―――っ!!」 可愛らしい顔からは想像も出来ない程に猛々しい神威の性器が、花びらの奥まで入り込む。 全身を襲う快楽に、気を失いそうになる。 「あは、いい顔だね。の、イチバンいい顔」 「ああっ、神威…あっ、」 受け入れる体勢を整えていたそこは、更なる快楽を求めて逆に収縮していた。 神威のそれがきつくて柔らかい襞を何度も何度も擦り、往復する。肌と肌がぶつかり、水音が響く。 「すっごい、絞まってる。禁欲してた…だけ、ある」 「ぁ、ずっと、欲しかった…んっ」 「そんなに、俺が欲しかったの?」 「んぁっ、そうなのっ、神威が、欲しかった…っ、」 譫言のように応えるを見て神威は楽しげにしていたが、彼の額にもじんわりと汗が滲み始める。 腰を打ち付ける強さは増し、それに合わせて言葉は途切れ途切れになっていた。 烈しく躯を揺すられて髪の毛は乱れ、快楽から顔は火照り、涙が滲む。 薄暗いその部屋で快楽を貪るは酷く艶っぽく、そして美しい。 「淫乱っ、だなぁ」 「誰が、そう…ぁっ、したの、よ…んっ、あっ」 「俺、なの?」 「貴方以外、いない…っ、神威だけ、神威、神威…!」 「じゃ、もっと、俺しか、見えないように、して、あげる!」 片脚をぐいとあげられ、躯は側面を向く。 結合は更に深くなり、躯を駆け抜ける快楽も増す。 頭を掻きむしりたくなる程の好さに、意識が飛びかける。 「んぁあっ!やっ、あっ、あぁあ…っ」 「おっと、まだトんじゃダメ」 「もう、駄目、駄目になる!あっ、いやぁ、あぁ!」 昇り詰めるが如く腰を打ち付ける速度は増し、の声とともにぐちゅぐちゅという粘着質な水音も大きくなる。 急激に収縮を始めるの膣に、神威のそれは限界まで怒張した。 「神威、神威っ、一緒…にぃーっっ」 「あは、わかった…よ、っく…」 「ぁっ、あ、あぁ ―― っっ!!」 表情を変えない彼の、少し苦しそうな顔を見ながら絶頂を迎える。 ビクリビクリと痙攣する躯を宥めれば、次第に落ちていくような感覚に変わっていく。 地中まで落ち、熔岩の上を漂っているような。柔らかいマグマの波に、二人で揺られる。 「…………」 重たい瞼を持ち上げると、すぅすぅと寝息をたてる神威が映る。 寝言で呼ばれた自分の名。自分の夢でも見ているのだろうか。 それに応えるように、小さく小さく彼に囁く。 ありふれた言葉をひとつ
( あ い し て い る よ )
行為の後、夜着に着替える事なく眠ってしまった彼に。 眠りながら名を呼ぶ彼に。 ただひとつ、他に変えられない言葉を。 |
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