紺色の遮光カーテンの隙間から、人工的な光りが差し込んでいる。 陽当たりは決して良くないというのに、池袋という土地柄、夜でも外は明るい。 部屋の真ん中を横切る細い筋のような光りは、奥に置かれたパイプベットをも跨いでいる。 それが唯一の明かりというその薄暗い室内は、まだ春先だというのにじっとりと蒸し暑い。


「っん、や、あぁ…っ」

、キツく、ねえか…?」

「ンっ、いいの、気持ちいいよおぉっ」


線になった光りは彼女も照らし、その部分だけ、汗ばむ身体がキラキラとしている。 シーツを強く握っているせいでくっきりと現れる手首の筋。 動く度にたゆたゆと揺れる双丘。 奥に入る度に涙が溜まっていく目尻。 快楽でトんでしまいそうな理性の片隅で、門田はその光景を、純粋に綺麗だと思った。


「…ねぇ、キスっ、キスして…」


ぎゅうと瞑られていた目が、強請るように門田を見上げていた。
その酷く官能的な表情に、背中がゾクリとする。


――― くそ、めちゃくちゃ可愛いな、


言われた通りに口唇を合わせ、舌を絡ませる。 烈しく揺れていた腰をピタリと止め、むさぼるように交わすキス。 くちゅくちゅという水音が脳に直接響く。
その淫猥な音がまた二人煽りたて、まるで何かに取り憑かれてでもいるかのように快楽に身を委ね、身体を再び揺する。


「あっ、凄いよおぅっ、あっ、あっ…!」

「…くっ、、俺も、すげ、イイ…ッ、」


濡れた粘膜の波間を行ったり来たりし、意識も何もかもがもっていかれそうになる。
もっと、もっと、全部を入れてしまいたいという衝動。
より強く腰を打ち付けられて歪むの表情は恍惚とし、快楽を貪る女の顔になっていた。


♂♀



狩沢と遊馬崎に紹介された少女の名は、狩沢と言った。
それは間違いなく狩沢と血が繋がった妹で。
仲間の一人、妹みたいに思ってる奴の妹は結局のところ妹で、 まさか、こんな関係になるなんて思いもしなかった。


『この子ドタチンみたいなタイプがドストライクだから、あんまり紹介したくなかったんだけど』

『ああっ、妹が離れて行ってしまうっ。俺の妹がぁぁ!』

『ゆまっちの妹じゃないけどそれは妹萌え?妹萌えなの?ゆまっちどうなのよ!』

『門田さん!ちゃんは俺にとって2.5次元妹です!大切にしてくださいね…っっ!!』

『…いや、思いっきり3次元だろうが』


相変わらず2次元と3次元を行き来…いや、2次元に行きっぱなしになっている二人から、 そう紹介された。 姉とはまた別な、可愛らしいけれど無表情を貼りつけたような、美少女。 第一印象は、その程度だったと思う。…けれど。


『よろしくお願いします、ドタチン』


その人形のような表情が、ふにゃっと崩れて笑顔に変わり、そう言った。
姉も呼ぶその渾名はそう呼ばれる度に気に障ったが、正直、この時は気にすらならなかった。 もしかしたら、その瞬間に、既に惚れてしまっていたのかも知れない。


♂♀



「んあっ、もう、ダメッ、イっちゃいそうだよお…!」

「ちょ、待て、も…ちょい、」


の腕を引き、結合部の抽挿を止めぬまま彼女を抱きしめる。 ギシギシとパイプベッドが軋む。 譫言のように、『好き、好き、好き』 と繰り返すの口唇を貪り、それを止めさせる。 これ以上言われたら、どうにかなってしまいそうだった。


「もう、ダメっ、無理だよお!ドタチン、ドタチン…!!」

「こっ、んな時に、ドタチンとか、呼ぶ…なッ。名前で、呼べよ…!」


逃げようとする腰を抱き締めて引き寄せ、容赦なく最奥を突き上げた。
気が遠のきそうな快楽の大きな波が二人に襲いかかる。
繋がったそこは痺れて熱をもち、じめっとしていた部屋の温度が更に上がっていく。


「きょ、京平、京平…さ、ん…っ!イく、イくう…!」

「…?!、っ…ぅ…!!」


♂♀



どろりとした白濁に浸かっていた部屋は少しづつ日常を取り戻し、でも隣で眠る女が非日常を感じさせる。
寝心地が悪いだろう門田の腕を枕にし、すうすうと寝息をたてる。人形のようにも見えるけれど、呼吸で上下する布団がそうではないといっている。


『京平…さ、ん…っ!』


初めてに名を呼ばれ、思い切り動揺した。
が達するまで堪えるつもりでいたのに、それすら出来なくなる程に。


愛する女性が出来たとしても、ハマってしまう事はないと思っていたのに。
もうどうやっても、から逃げる事は出来ないのだろう。


カーテンから洩れた光りはを照らす。
時折眩しそうに眉根を寄せ、でもすぐにシマリのない寝顔に戻る。 間抜けにも見えるその顔すら可愛いと思えてしまう。
眠りにくいその人工的な光りすら、今は好きになれそうだった。